朝から、まるくんはとても機嫌が悪かった。
「トミカとプラレールのDVDが見たい!」
そう言って、大きな声で泣き始めた。
今日は骨髄検査のため、朝7時から絶食。
お腹もすいていて、「ごはん食べたい」「おかし食べたい」と、またしばらく大泣き。
体重測定もできなかった。
朝の採血に先生が来て、逆血で採血成功。
少し落ち着いたまるくんは、先生が部屋を出ていったあとに
「きょうは、みどりのやつしてなかったね」と、少し笑って教えてくれた。
(※“みどりのやつ”=採血のときに腕に巻くバンド)
「ママのおひざでねたい」
そう言うので、膝にのせて向かい合わせで抱っこしていると、まるくんはそのまま眠った。
たくさんのお医者さんたちが回診で部屋に入ってきた。
まるくんは下を向いたままだったけど、先生たちが部屋を出ていったあとに
「たくさんいたね」と、こっそり教えてくれた。
そのあと別の先生が来て、背中にシール状の麻酔のようなものを貼ってくれたけど、まるくんはとても嫌がって、剥がしてしまった。
そのため今回は、シールなしで表面麻酔の注射をしてもらうことに。
11:40
骨髄検査のため、処置室へ。
点滴から眠くなる薬を入れてもらい、まるくんはすぐに眠った。
私は病室に戻って30分待機。
12:10
麻酔でまだ少しぼんやりしているまるくんが病室へ。
1時間ほどすると、意識もはっきりしてきた。
「おなかすいた…」と訴えるけど、CTがあるため絶飲食は続行。
DVDを見たり、トミカで遊んだりしてなんとか気を紛らわせる。
看護師さんにも少しずつ慣れてきて、血圧や体温を測らせてくれるようになった。
(前までは「ママがいい!」と泣いていたのに)
再び回診で、たくさんの先生たちが部屋に。
外国の先生もいて、親の私はちょっとビビる(笑)。
通訳の方に「かわいいね」と言ってもらえて、まるくんもニコッと。
そこへパパが来てくれて、
お気に入りのはやぶさ・ドクターイエロー・かもめのスプーンとフォーク、そしてシール帳を持ってきてくれた。
少しだけ機嫌が良くなる。
プレイルームで、まるくんが欲しがっていた新幹線のおもちゃを発見!
病室に持ち帰ると、とても嬉しそうだった。
そのあと、CTのため呼ばれる。
「ママがいい〜!!」と大泣き。
眠る薬を入れてもらいながらも、「ママがいい」と泣く声が聞こえてきて、胸が締めつけられる。
検査後、先生に呼ばれて、夫と一緒に病名と今後の治療について説明を受ける。
正直、なにがなんだかまだわからない。
「何か質問はありますか?」と聞かれ、やっと絞り出せたのは、
「もし順調に治療が進んだら、幼稚園など、普通の生活に戻れる目安はありますか?」という言葉だった。
先生は「2年くらいは難しい」と。
まるくんが大好きだった幼稚園も、辞めなければいけない――そう思うと胸が痛む。
病室では、何度もお友達の話をしてくれていたのに。
長い説明が終わって病室に戻る。
「頑張るしかない」「絶対に泣かない」
そう心に決めた。きっとパパも同じ気持ちだったと思う。
私の姉と弟にも、まるくんのことを伝えると、ふたりとも驚いていた。
でも、「何かあったら、できる限り協力するから、いつでも言って」と言ってくれて、心強かった。
感謝の気持ちを伝えて、今日という一日を静かに振り返る。
「ママのおひざでねたい」
そう言って、うとうと眠るまるくん。
――どうか、絶対に元気になりますように。
毎日そう願いながら、生きていく。